日々破戒して

the road to the real musician

怪物

「もしもし。今何してる?」

 

とギターの林八百万から電話がかかってきた時、俺はアコースティックギターを片手にローンで買ったiMac Retinaに向かっていた。今朝起きた時から、将来への不安に胸を蝕まれ、Apple Musicでニューカマーを聴いたり、Twitterのタイムラインに流れてくる誰かのいいねが数千ついた曲などを聴き、更に焦燥を募らせ、とはいえ現状打破するにはみんなの心を動かせる良い曲を是が非でも書くしかない、芸術やら表現という言葉を一旦封印しなければいけない、岡本太郎のことは忘れろ、そういった切羽詰まった状況(無論自業自得である)で、月曜日に林八百万の家で共作した曲の、宅録に励んでいたのだった。

 

「今、仕事終わったとこなんだけど。怪物聴いたよ。」

 

怪物とはその共作した曲のタイトルである。昨日ギター、歌、ピアノだけの簡易録音したものを送っていたのだった。

 

「うん、今まさに、それを作り直してたんだよ。どうだった?」

 

俺は編集ソフトの「停止」ボタンを押して耳を傾ける。

 

「めっちゃよかった!!!!!!!!!!」

 

「おお!まじか。」

 

それはよかった、と思いつつ、作業のモードに入っていたので上手く切り替えができず、感情がこもらない。

 

「今までみたいにロックロックしてないし。これで全然いいじゃん」

 

「ありがとう。今また作り直してるからさ。楽しみにしててよ」

 

そして電話は切れた。あれ、、、なんかこの感じ、バンドやってる人みたいだな...。そう思った。俺にも春は来るのだろうか。春よこい。